前回はロゴをデザインする時に僕が気をつけていることについて書きました。今日はグラフィックデザイナーの視点とは少し違うかもませんが、2つの例を挙げて解説してみようと思います。
共同体意識を高めるためのデザイン
ひとつめは都内にあるお寺で、行事の時に着るTシャツにプリントされるロゴのデザインです。
併設された保育園児も含めて様々な人が参加するようです。このロゴはお寺の葬祭場兼多目的施設のエントランス 改修設計をした時に、施設のロゴもデザインしました。それをTシャツ用の横長にデザインしなおしたものです。
このお寺のご住職とその奥様はとても仲が良く、雰囲気はほのぼのとした楽しい方です。あまりシャープ過ぎるデザインは合わない気がしました。Tシャツを着るのは行事に参加する保育園の保護者含めて多数です。それを見るのは子供達やお越しになる大人達です。対象となる幅が非常に広いので、誰もがわかりやすい形態が必要でした。ではデザインを見て見ましょう。
OーKA(桜花:おうか、おーか)と読みます。アルファベットを抽象化した文字(丸・四角・三角)に変換し、それだけでデザインしています。子供たちがこれを読むのは難しいでしょう。でも子供たちでも良く知っている形なので、「丸・四角・三角が書いてある!」と思うはずです。それで良いのです。表現している内容はわからなくても、行事の時のサインとして認識できることが大切です。大人はグラフィック的な丸・四角・三角の組み合わせが何を表しているか、一瞬考えるはずです。このお寺が桜花という名称を使っていることを知っている人達なので、「O」の中のピンク色が桜を意味し、OーKAの「ー」が長音だと気がつくと、「ああそうか」と読み取れます。これもその程度の認識で良いのです。この場ではあくまでも皆が同じロゴマークをつけたTシャツを着て、行事に参加しているという共同体意識を高めることが大切なのですから。
ふたつめは、僕らの事務所のロゴです。これは少し理屈っぽいです。
多様な思いをロゴに重ねるデザイン
事務所のデザインの方向性・事務所名・世界での位置・ロゴに込めた僕らのポリシーを表現しています。
四角いドット(点)のみで構成する
僕らの事務所がデザインする建築やものはシンプルで少しミニマルな感じがすると思います。ロゴもシンプルかつミニマルな四角いドットのみを使用しています。
事務所名を想起させる
一見するとロゴはドットなのですが、fig.1のように線でつなぐと「F」が浮かび上がります。次にfig.2のように線でつなぐと「E」に見えます。すなわち、FAR EASTという事務所名の「F」と「E」を表しているのです。
世界での僕らの位置を示している
小さいドットが6個、大きなドットが1個で構成されています。小さなドットは大陸を、大きなドットは日本を表現しています。fig.3のように、六大陸の端、FAR EASTという位置を示しています。
僕らのポリシーを表現している
fig.4のように、ドットは線でつなぐことができます。これは僕らのポリシーである『この小さな国である日本から、建築・デザインという行為を通して何かを世界に発信したい』の表現です。線でつなげるということは、ネットワークを表現しています。六大陸の端からネットワークを構成しながら世界に発信していく、そんな意味を込めています。
おわかりになりましたか?ロゴという小さなデザインにも様々な意味をシンプルでありながらも表現できるのです。建築のデザイン、グラフィックのデザインにしても、いつもデザイナーは頭をひねりながら考えています。それを解読してみるのも楽しいかもしれません。
このブログを読んで、ロゴのデザインをして欲しいという方はcontactから是非ご連絡下さい。最後に宣伝でした。今日はここまでです。