2011年3月、未曾有の災害をもたらした東日本大震災。その翌年から縁あって、今までに福島県郡山市に2軒、須賀川市に1軒の住宅を設計しました。今回と次回は、2013年の作品と2018年の作品における設計の考え方・クライアントの意識の変化を比較してみます。
東日本大震災後の福島での住宅01
「東日本大震災後の福島での住宅」の第一回は、2013年6月に竣工した住宅です。原発の事故による放射線の影響を意識したプランになっています。
Two Stories:2階建てのふたつのストーリー
夫婦と2人の子供のための住宅です。設計依頼された当時(2012年)、福島県郡山市は東日本大震災での原発の事故により、放射線量は高い状況でした。いろいろヒアリングしていく中で、子供たちの遊び場を家に設けることが大きなテーマになっていきました。そこで、環境的に不安が残るこの場所に2つのストーリー(物語、階)を置きました。建物内はオープンエンドな構成とし、様々なストーリーが展開します。
ひとつめのストーリーは屋内の1階で展開します。ワンルームの大きな空間に生活機能を配置し、中庭を設けました。光と風を感じながら、食事、団欒、子供たちの屋内の遊び場が、中庭を中心に展開します。

震災後の区画整理事業地区の治安を考慮し、建物自体でセキュリティを確保するため、閉じた外観としている.
photo by Hideki Ito

外の玄関.ドアを入ると屋外の中庭で、二重のセキュリティを確保.
photo by Hideki Ito

外の玄関を入った一つめの中庭.屋内へのドアを設けている.
photo by Hideki Ito

屋内への玄関.宅配便などを受け取るための小窓を設置.
photo by Hideki Ito

1階は二つめの中庭を中心に子供達が屋内で遊べる、ぐるぐる走り回れるワンルーム空間.
photo by Hideki Ito

2階の寝室・部屋干しスペース、子供部屋へ通じる二つの階段を設置.
photo by Hideki Ito

中庭と室内、2階寝室との関係.どこからでも家族の雰囲気が伝わる構成.
photo by Hideki Ito

バスルームはFRP防水仕上のオリジナル.3つめの中庭は、バスコートになっている.
ふたつめのストーリーは2階の屋外デ ッキで展開します。子供と大人の空間はデッキを挟んで向かいあっています 。各空間には各々の階段でのみアプ ローチできます。2階にそれらを繋ぐ屋内空間はありません。デッキ状の空間を通して視線と雰囲気が繋がります。デッキ敷きの1階の屋根が、屋外の遊び場です。

1階屋根の屋外デッキ.ここが子供達の屋外での遊び場となる.
photo by Hideki Ito

子供部屋が親の寝室に適度な距離を保ちながら、向かいあっている.
photo by Hideki Ito

2階の子供部屋.閉じているようで、開かれた空間.
photo by Hideki Ito

子供部屋のロフトベッドとして使える収納.
photo by Hideki Ito
子供たちを遊ばせるという、ごく普通なことが特殊なこととしてとらえられるこの地域での、建築的なひとつの解答となっています。子供たちは走り回り、自然を感じ、ゆったりとした時間を過ごすことができます。ここから見える郡山の自然やこれから変わっていくであろう周りの景色や、近隣との新しい関係が、子供たちの記憶になっていくことを期待しています。
用途:専用住宅 敷地面積:252.00m² 建築面積:76.23m² 延床面積:105.98m²
構造・階数:W造地上2階 施工:オオバ工務店
次回は、今年(2018年)竣工した住宅を解説します。
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