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中古マンションを建築家とリノベーションする(2)

  1. architecture

前回は中古マンションを選ぶ時のチェックポイントを解説しました。今日は中古マンションを建築家とリノベーションする時のメリットについて解説しますが、その前に設計・監理契約と工事契約について書きたいと思います。通常、リノベーション・リフォームを専門会社等に頼むと設計・監理と工事がセットになっていますので、契約時に工事費を含めた金額の1/3程度の請求があると思います。建築家とのリノベーションでは、設計・監理契約と工事契約が完全分離しています。そのために、まず建築家との設計・監理契約が発生します。実施設計(工事のための図面作成)が終了すると、工務店に見積もりをとり、金額の調整をおこなって、工務店と工事契約となります。工事契約をするまでは設計料しかかかりません。

では、始めます。

中古マンションを建築家とリノベーションするメリットは何か?

建築家と中古マンションをリノベーションする時だけではなく、建築家と新築の家づくりをする時にも共通するメリットですが、以下の3つが挙げられます。

1. デザイン:ライフスタイルをデザインする

まずはデザインです。デザインというと、素材や形という感じがしますが、一番大事なのは住み始めてからの「ライフスタイル」のデザインです。今後何十年か住み続ける、終のすみかとして、または賃貸に出す、色々なケースが考えられますが「住む」という観点から「今」だけをデザインするのではなく、「将来」も見据えた空間の構成をデザインするということです。例えば夫婦・子供2人の家族構成なら、3LDKか4LDKにする場合が多いと思います。しかし個室を中心に構成し、中廊下型のマンションだと子供とみんなが一番集まるリビングとの関係が希薄になり、「家」としての「一体感」がなくなるかもしれません。家族みんなの「雰囲気」が「家」全体に感じられる構成の方が良いでしょう。また、子供が独立した後に夫婦ふたりでどういう生活をするのかも大きなポイントです。老後を迎える夫婦ならば、個室メインに構成し、中心にリビング・ダイニングを配置し、そこで「会う」という新しい感覚の「家」も新鮮だと思います。「住む」ことをイメージし、それを「形」にするのがデザインなのです。僕らは色々なお話しを聞きます。趣味や生活時間帯、好きなもの・こと、嫌いなもの・こと、etc・・・。それら様々な思いの断片を重ね合わせて、みなさんの心の奥底にある「ライフスタイル」を発見してたったひとつのオーダーメイドのデザインを提案します。

2. コスト:総予算から空間を提案する

リノベーションをする時に最重要ポイントといっても過言ではないコスト。「ライフスタイル」をデザインしようとしてもコストが調整できなくては実現しません。下記は鉄筋コンクリート造・75m2程度の改修内容と一般的なコストを示しています。仕上材やその他条件によっても変わってきますが、実際に僕らが設計したケースを元にしています。

いかがでしょうか?予想していたより、高い!と思われたのではないでしょうか?リノベーション・リフォーム会社で、低工事費を広告してるケースを見かけますが、安いのには訳があります。それは、各会社の標準仕様に合わせた場合という条件付なのです。床はこの中から、壁はこのクロスの中から、設備はこれです、という感じです。みなさんがネットで気に入ったものを導入しようとか、ちょっと変わったことをしようとすると、急に金額がアップします。標準仕様は安いけれど、そこからは足し算になっていきます。最終的にすごく工事費がアップしてしまった、という話しはよく聞きます。僕らはまず総予算を確認します。その中で何ができるのか、またはこれくらい工事金額をアップさせればこれくらいのことができるなど提案しながら調整をします。僕らには床・壁・天井・設備など設計時の標準仕様はありませんから、予算をどこにかけていくかを検討できるのです。みんなが集まるリビングはこだわりを持った良いものを使おう、でも寝室は寝るだけなんだからぐっと金額を抑えよう、設備も15~20年で交換しなくてはならないので、交換しやすいシンプルなものにしよう、洗面器はデザインにこだわってみよう、など。僕らの設計・監理料を含めても同じ仕様でリフォーム会社が見積もりした場合と比べると、コストを抑えられるケースが多いようです。

次にみなさんがコストを検討する時に悩むのが見積もりが適正かどうかではないでしょうか?見積もりをもらってずらりと並んだ項目をみても一体何が高いのか、安いのか、この項目は何だ?必要なのか?など困ってしまう方がほとんどだと思います。結局、少し値引きしてもらって、まあいいかという感じになると思います。建築家とのリノベーションではそれらは全て建築家がチェックします。建築家が描いた図面・仕様書をもとに工務店が見積もりしているのですが、その内容がきちんと盛り込まれているか、数量はあっているか、単価は適正か、すべての項目について客観的に第三者としてチェックします。最近はネットでだいたいこれくらいでできるはずだよ、それは高すぎるなど無責任な発言も目立ち、仕上や仕様・条件もわからずにコメントする方がいますが、困ったものだと思います。建築家に任せてもらえば、そんな迷いもなくなります。

3. 監理:より良い空間にするために工事をチェックをする

ちょっと変わった字です。管理ではありません。施工する工務店の現場監督が行うのが管理。監理とは僕らが描いた図面や仕様書などに沿って工事がおこなわれているか、それをチェックすることです。現場に行って工事の進捗状況の確認、図面との不整合のチェック、工事の難しそうなところを円滑に進められるように指示をします。みなさんが現場に行って工事を見ても、単に現場見学になってしまいがちです。僕らがみなさんの代理人という第三者として工事をチェックします。設計・監理と工事が分離しているからこそできるチェックシステムです。安心してお任せいただければと思います。

最後にもうひとつ。リノベーションするのに建築家に設計・監理料を余計に支払うのはもったいない、リノベーション・リフォーム会社は設計・監理料をとっていないのに・・・というお話しもよく聞きます。リノベーション・リフォーム会社も誰かが設計しなければならないのですから、見積もりの項目にはのっていなくても必ず計上されています。また、建築家に頼むと、上記のような大きなメリットがあります。

上記3つのメリットに共感される方はぜひ建築家とリノベーションを進めてみてください。きっと後悔しない、素晴らしい空間との出会いが待っています。

次回は実例をもとに、リノベーションを解説します。今日はここまでです。

※このブログを読んで、リノベーションしたいという方はcontactから是非ご連絡下さい。

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黒川浩之-Kurokawa Hiroyuki-
株式会社FAR EAST 代表取締役
一級建築士
1968年生まれ 東京都出身
横浜国立大学大学院修了

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