「東日本大震災後の福島での住宅」の第二回は、今年(2018年)3月に竣工した住宅です。豪雨時や地震時に崖の上(下)に家があるというのは大きなリスクを伴う可能性があります。それでもそこに住むことのポテンシャルを重視したクライアントの住宅です。震災から6年。人々の意識が少しずつ変化しているのかもしれません。
東日本大震災後の福島での住宅02
「終の住処」そして’遂’の棲家
クライアントは60代半ば、一人暮らしの男性。福島県郡山市の崖の上に建つ住宅です。
要望はシアタールーム・コンクリート打ち放し・らせん階段、これら3つでした。年齢を考慮すると、1階を生活の中心に据えるのが常識です。しかし一見広そうに見えるこの土地には、いくつかの制約があるために1階を主生活の場とすることは断念しました。1階平面図で色がついているところが制約のある部分です。ひとつめは最大高低差4.6m程度の崖による制約です。崖条例により、オレンジ色の区域は建築することができません。ふたつめは、除染土の埋設範囲による制約です。除染された表層土を黄色の区域に埋設しているために建築できません。その他高低差解消のためのアプローチ空間、駐車・駐輪場の確保することによる制約です。結局、1階部分として建築できる面積は小さくなることがわかりました。一方、一人暮らしなので空間の機能として求められているものは少ない。玄関・シアタールーム・LDKらしきもの・寝室らしきもの・トイレ・風呂といったところです。実質的な面積配分から、1階は防音機能を持たせたコンクリートの箱にシアタールームを収め、その横に土間の玄関、生活空間は2階に展開することにしました。
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