久しぶりにオススメの本を紹介しょうと思います。本についての投稿が前回2019年1月だったので、だいぶ時間が空いてしまいました。前にも書きましたが、気の向くまま年間40〜50冊くらい(しっかり数えていませんが・・・)小説を中心に読んでいるようです。今回は、ここ1年半くらいの中で気に入った小説を何冊か紹介します。
「線は、僕を描く」 砥上裕將 講談社
水墨画家の砥上裕將氏の作品。第59回メフィスト賞を受賞したデビュー作です。簡単に言えば、両親を亡くした少年が、自分の内面と触れることを拒んで生きていたが、大学に入り、水墨画を描くことを通して外の世界と内面をつないでいくというストーリーです。でもそんな簡素な言葉だけでは表現しきれないくらいの内容でした。淡々と水墨画を描くことが語られるけれど、そこに単調さは微塵も感じられず、まさに絵が立ち上がってくるような感覚を覚えました。あるがままにモノに向き合い、その息吹を感じ、それとともに筆をふるう。建築の設計も線で描くけれども、僕はまだその境地には達していないなあ。
「人類滅亡小説」 山田宗樹 幻冬舎
「嫌われ松子の一生」「百年法」などを書いた小説家です。山田宗樹氏の小説にはいつも人間の奥底にある感情に対して揺さぶりをかけるようなテーマが多いような気がします。この小説も人間が生まれる前から空に存在している微生物、それに翻弄される人間、大きな時間の流れの中でストーリーが展開していきます。空に浮かぶ赤い雲、それがなんとも不気味なイメージを伴って僕の中に視覚化されました。
「高校事変 Ⅰ-Ⅷ」 2020.09現在 Ⅷまで 松岡圭佑 角川文庫
作者の松岡圭佑氏は好きな作家のひとりです。「催眠」「万能鑑定士Q」「探偵の探偵」「千里眼」シリーズなどテレビ・映画化されている作品も多く、ファンも多いのではないかと思います。これらのシリーズも良く練られていて面白いと思います。でも僕は「黄砂の篭城」「八月十五日に吹く風」「ヒトラーの試写室」などの歴史を扱った小説により魅力を感じます。そんな松岡氏が昨年から精力的に発表しているのが「高校事変」シリーズです。優莉結衣(ゆうり・ゆい)という平成最大のテロ事件を起こした反グレ集団のリーダーを父にもつ女子高校生が、自身の意志とは関係なく事件に巻き込まれる。そしてその事件を経るごとに自分自身の内面に存在する暴力的な欲望と、本来持っている優しさとの矛盾・葛藤が描かれています。シリーズが現在進行中なので、読んでいただくのが一番良いと思いますが、オリンピックや新型コロナなど現在の状況にリンクしていて、非現実的な世界が、リアルに感じられる作品です。
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