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中古マンションを建築家とリノベーションする(3)

  1. architecture

中古マンションリノベーション・デザインとプロセス

前回までに中古マンションを購入する時のチェックポイント、建築家とのリノベーションのメリットについて解説しました。今日は僕らが設計・監理した事例の解説です。今回取り上げる事例は、フルスケルトン・フルリノベーションではなく、リノベーションで最も多く行なわれる、タイプBです。一部プラン変更・床・壁・天井仕上更新・設備更新といった内容です。

クライアントは30代前半のご夫婦で共働きです。まだ子供はいませんが将来的にはご希望です。駅至近、築30年程度の中古マンション(78.75m2)購入時のリノベーションです。

既存プランのライフスタイルとのズレ・空間の問題点を把握する

 

購入時のプランを見てみましょう。竣工時のままで、変更はありません。典型的な3LDKです。昔よくあった、和室がLDに面した構成です。中廊下なので、玄関を開けた瞬間に暗さを感じてしまいます。リビングに和室が噛み込んでいるので、せっかくのLDが狭く感じてしまいます。キッチン・洗面・脱衣所が2ウェイ(2箇所から出入りできる)になっているのは良い点ですが、幅があまりないので物を置くと狭く感じられ、使いにくい印象を受けます。ベッドルームは収納もあり、標準的な空間です。

ヒアリングでは生活時間帯、趣味、好きなもの・嫌いなもの、好きなイメージなどを聞きながら、お二人の根底にある思いをくみ取ります。そこからわかったのは、ご主人は仕事柄、モノを綺麗に見せるということ、料理すること、そして美味しいモノをお酒を飲みながら食べるという行為にこだわりがあるようです。自分の好みのモノに囲まれて、寛げるカフェのような雰囲気を持った場になればいいなと感じました。奥様も仕事柄、整理された空間を望んでいるようです。空間的なイメージはご主人に任せているようです。また、今のお二人の生活から、家族が増えるなどの変化があった時に、フレキシブルな対応ができる空間にすることが重要だと思いました。なるべく開放的な広々とした空間を確保し、時間の変化に合わせて自由度高く仕切っていく、そんな仕掛けが必要だと思いました。

閉塞的な空間から明るく開放的な空間へ

ではどんなプランを提案したか見ていきましょう。ヒアリングした感じでは、限りなくフルリノベーション(タイプA)に近いので、当初提示された予算ではちょっと厳しいなと思っていました。そのことはお伝えしていましたが、まずはベストな案にして、見積もりの段階で調整をしていくことにしました。それがA案です。

既存図面を確認すると、キッチン・UB・トイレ・洗面の配管スペースを確保するためにその部分は、スラブが下がっていました。そのために、今の床高さでは設備機器の配置を大きく変更するのが難しいようでした。換気扇などのダクトが廊下からベッドルームに向かって設置されているので、廊下の天井高は変更できません。また、管理規約で床材はカーペットしか使えません。他にもプランに大きく影響する制約があることがわかりました。いくつかショールームを回り、壁や床の仕上げ・シンプルかつ機能的な設備機器を選択し、コストを抑える方法を探りました。プランはCG(コンピューターグラフィック)を使用してプレゼンテーションを進め、意見を出し合い、修正を何度か繰り返しました。特徴的なのは、キッチン・洗面スペース・脱衣・洗濯スペース・UBをまとめたコアの左右を2つのワンルーム空間にしたことです。和室は撤去し、広々としたLDとし、ベッドルームも間仕切壁を撤去しました。落ち着いた空間かつカフェのように見せるために、コアを木の雰囲気を持った壁で挟み込み存在感を持たせました。LDは可動間仕切によって区切れるようにしています。LDのアクセントになるダメージ加工のテーブル、TVのローボードを兼ねた収納はオリジナルの製作家具です。ベッドルームは将来子供部屋になる可能性があるので、中間を家具などで仕切ることを想定しています。キッチンは料理を2人でもできるように広げ、新たにカウンターを設けて作業台かつオーブンレンジなどの家電を置けるスペースを確保しています。暗かった玄関から廊下はLDに繋がる建具(扉)をガラス入りの框戸にし、キッチンにはLDと廊下の視線を繋ぐガラス窓を設けて明るさと開放感を確保しました。玄関・廊下からキッチンはお店の厨房のような雰囲気になっています。オープンキッチンにするというアイデアもありましたが、料理の匂いが住戸全体に広がるのがお好きではないようなので、独立したキッチンにしています。脱衣スペースの狭さを解消するために洗面スペースをベッドルーム側に移設しました。ウォークインクローゼット・ベッドルームとも直結しているので、お化粧や身支度にも機能的に使えるスペースになっています。ステンレスの洗面台で木とは対照的なクールなイメージでまとめています。いろいろなアイデアをまとめて実施設計図(工事をおこなうための図面)を作成し、工務店に見積もりを依頼しました。でも見積もり金額は予想していた通り、予算オーバーです。数量・単価を細かくチェック、建具・家具などの仕様変更などをおこないましたが、やはり希望予算までは落ちそうにありません。そこで、優先順位をつけてプラン変更をおこないました。そしてまとまった最終案がB案です。

解体部分を減らし、工事する範囲を絞りました。コアの右側のベッドルームを床・壁・天井の仕上げ更新のみにし、洗面スペースを当初の位置に戻しました。脱衣スペースの狭さを解消するために、収納を低いものにし、視覚的な効果によって感覚的な広さを確保しました。それ以外はA案のままです。いつも予算との格闘が必ずあるのですが、単純に何かをやめるのではなく、優先順位を決めて検討し、イメージを明確にすれば必ず解決策はあるものです。工事中は週に1~2回は必ず現場に行って、監理をおこないます。クライアントにも何度か来ていただき、イメージの確認をしてもらいます。最後に検査をおこない、お引き渡しです。閉塞的な空間から明るく開放的な空間へとリノベーションされました。

お引き渡しが済んだからといってそれで終わりではありません。その後も1年点検や何か不具合や家族構成の変化によって手を加えたい場合などはご連絡をいただきます。そうやって長いお付き合いが続いていくのです。

建築家とのリノベーションとは・・・

いかがでしたか?作品事例をもとにプロセスも含めて解説しました。僕らはひとつのプロジェクトが始まると全力で取り組みます。それは単なる仕事として割り切っていてはできません。クライアントの未来のために僕らがいる。それくらいの思いを持って、プロジェクトに向き合います。それが建築家としての使命だと思っています。

建築家とのリノベーション、ぜひみなさんも試してみてください。建築家とならきっと新しい生活を描くことができるはずです。

今日はここまでです。

このブログを読んで、建築家とのリノベーションをしてみたいという方はcontactから是非ご連絡下さい。

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黒川浩之-Kurokawa Hiroyuki-
株式会社FAR EAST 代表取締役
一級建築士
1968年生まれ 東京都出身
横浜国立大学大学院修了

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