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東日本大震災後の福島での住宅(2)

  1. architecture

生活空間の面積を確保するために2階コンクリートスラブを跳ね出して、2階の面積を広げました。そこにLDKらしきもの・寝室らしきもの・トイレ+洗面S・脱衣S+UBの機能を配置しました。2階コンクリートスラブ上の「家」として認識しやすい形態をした木造空間は、必然的に1階より大きな形状になります。光と風と眺望を確保する中庭的なバルコニーを挟んでLDKから寝室まで一体感のある空間構成としています。

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LDKのような空間.コの字に配置されたカウンターが生活の中心.
photo by Hideki Ito

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切り取られた風景を楽しむ空間.バルコニーは光と風を調整する装置.
photo by Hideki Ito

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ミニマルな機能に絞った寝室.
photo by Hideki Ito

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BRとLDKを繋ぐギャラリー.クローゼットに見える左右の折戸の中にトイレと浴室が収められている.
photo by Hideki Ito

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折戸を開くとトイレと洗面Sが広がる.
photo by Hideki Ito

震災後にも関わらず崖の上というリスクを許容し、老後を考慮すればバリアフリーが一般的ですが、それをあえてしていません。「終の住処」というよりは、この場所の持っているポテンシャル(眺望を含む環境)と趣味を楽しむことを最優先してクライアントの理想を形にした「’遂’の棲家」です。ここに住む、そういったクライアントの強い意思が崖の上に屹立する外観からも感じられる、そんな住宅です。

※将来的にらせん階段の昇降が不自由になった場合は南側バルコニーに面してリフトを設け、2階生活空間へのアプローチをバルコニーからおこなうことを想定しています。

用途:専用住宅  敷地面積:219.47m²   建築面積:58.32m²   延床面積:77.76m²

構造・階数:W造一部RC造 地上2階   施工:オオバ工務店 

あの時、そして今。

2012年3月11日早朝、郡山の田園風景

震災の翌年に郡山市街を車から眺めた風景を今も思い出します。一見、震災の爪痕は感じられませんでした。しかし、歯抜けになった土地・誰もいないビル、そして郊外に立ち並ぶ仮設住宅。ああ、確かにここは被災地なのだと感じました。そして見ることができない放射線は、街中に立てられている放射線量モニターによって被災地であることを数値で示していました。震災から6年たった今ではあまり感じることのない感覚です。何があっても生きていく、明日に向かって生きていく。それで良いのかもしれません。住宅はシェルターであると同時に生活に楽しみを与える仕掛けでもあります。「ただ住む」から「そこで住むことを楽しむ」、そういった住宅に変化していくことは、確かに震災後の復興を示しているのだと思います。

※設計のご相談・ご依頼はcontactからお問い合わせください。

 

 

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HK

黒川浩之-Kurokawa Hiroyuki-
株式会社FAR EAST 代表取締役
一級建築士
1968年生まれ 東京都出身
横浜国立大学大学院修了

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