小田和正-建築からの思想-
小田さんの大学院時代の話はオフコース・小田和正ファンなら誰でも知っている内容になってしまいました。まとめとして、小田さんの建築観・思想をまとめておこうと思います。これは小田さんが建築ではなく、音楽を選んだ理由と重なります。上述の東北大学の卒業設計の敷地選択はひとつのヒントになります。小田さんが建築や都市について語っていた内容で興味深い発言があります。僕の記憶している内容なので、出典は明らかではないのですが、”どんな素晴らしい建築を作っても次にその隣が気になる。そこだけ良くしても街全体は良くならない。都市全体を良くするには、単体の建築だけではダメなのだ。”という主旨の発言です。小田さんはモダニストなのだなと感じたのを覚えています。モダニズムの都市計画ではマスタープランがきちんと描かれていることが大前提です。今の日本の都市・世界の都市がその方法を踏襲しています。単体の建築を作るだけでは、建築家の建築観は完結できない。小田さんが参考にした京都会館は都市にあり、卒業設計「ART VILLAGE」の敷地は伊豆高原に設定されました。「ART VILLAGE」は小田さんの建築観・デザインを周辺の環境に左右されずに完結できる敷地に計画されているのです。小田さんの建築観は雑多な都市の中では成立しないと無意識に感じていたのでしょう。建築ではできなくても音楽なら自分の世界観は完結できる。それが、建築ではなく音楽を選んだ最大の理由だと思います。でも、と僕は思うのです。小田さんが建築家として生きていたとしたら、雑多な都市の中でどう建築があるべきか、それに立ち向かっていたのではないかと。それは小田さんの思想の部分に重なります。卒業設計というのは不思議なもので、何年たっても思い出します。学生の時に死ぬほどの思いをしながら純粋に建築と向き合った思いは建築家となった今でも消えはしません。いつもそこに戻っていきます。小田さんが死ぬ気で考えた卒業設計で掲げた日本文化の向上、その意思は今もたぶん変わっていません。それは音楽を選んだ今でも、心の中にずっとあり続けている強い思いなのだと思います。
小田さんの作曲手法と建築との関連性について書いた「オフコース・小田和正の音楽と建築のアナロジー」も是非ご覧ください。
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※1 建築ジャーナル2012年11月号より抜粋
※2 早稲田理工byAERAより抜粋
※参考文献 東北大学建築学科 創立60周年記念 卒業設計作品集
※参考文献 建築ジャーナル2012年11月号
※参考文献 早稲田理工byAERA
※参考文献 早稲田大学大学院理工学研究彙報(22)
※その他 学術論文ではないので、wikipediaも参考にしています
fig.1 https://ja.wikipedia.org/wiki/フランク・ロイド・ライト
fig.2 https://ja.wikipedia.org/wiki/立原道造
fig.3 http://touron.aij.or.jp/2017/04/3845 web 建築討論より