正月やお盆などのまとまった休暇には、必ず建築の本を読むようにしています。といっても正月は父のところに行ったり、妻の実家に挨拶したりと時間があっという間に過ぎていきますが。今回は下記2冊を年末から正月にかけて読みました。現代建築や都市論に興味のある方は読んでみてください。
現代都市理論講義 今村創平 オーム社
メタボリズムなどの1960年代から70年代を中心にレム・コールハースまでの都市理論の解説と著者の視点を交えた名著です。なかなか読む時間がなかったのですが、やっと読めました。非常にわかりやすく明解に都市論を横断することができます。第6章の「シチュアシオニストとニューバビロン」では、日本に紹介されるのが90年代だったシチュアシオニストについて書かれています。90年代前半に大学院を修了した僕にはあまり馴染みがなかったのですが、ここ20年くらいシチュアシオニストの考え方が建築界に大きな影響を与えています。シチュアシオニストはイズムではないので解釈にばらつきがあるのですが、今村氏は明確に定義付けをしていています。都市論をどこから学ぶべきか悩んでいる学生や都市論に興味のある方は是非読むべき一冊だと思います。
モダニズム崩壊後の建築-1968年以降の転回と思想 五十嵐太郎 青土社
建築史家で東北大学大学院教授・五十嵐太郎氏の最新作です。1968年以降の建築思想・動向について、いくつかの考察がまとめられています。1968年(僕の生年でもあります)パリの五月革命という象徴的な出来事から建築思想への考察が始まります。僕が学生時代に夢中になって読んだポストモダン・脱構築から現在までの現代建築思想について書かれています。雑誌等に掲載された記事に加筆・修正したものを収録しているので、全体的な建築論として成立していませんが、独自の視点によって切り取られた批評は若手の論客と言われるに値する内容です。ただ解釈の誤読を避けるために引用(抜き書き)が多く、少し読みにくい感じになってしまっているのが残念です。
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